20230425 記録

朝、通勤ラッシュの時間帯。中野駅前の喫煙所が中央線と同じ人口密度なのだけれど、あそこまでが中央線ってことだろうか。分園、みたいな、分煙ってことか。

週に一度のお手伝い仕事。最初はAIをいじくるという内容だと聞いていたが、先週は雑務とランチの席取りだった。今週は行くやいなや「今日は授業をやってみませんか」と言われる。新学期が始まり、新一年生が入学してきた。総合的な学習でSDGsの単元があるのでその問題の解説をやってほしいとのことだった。断ることもできたようだが、時間があったのとこの年齢で高校1年生に授業をできるという機会が面白かったので引き受けることにした。

そこから、その日に扱う問題と資料を見て準備をするわけだが、まさか自分が授業準備をすることになるとは思っていなかったのでとても不思議な気持ち。本来の仕事にはあまり関係のないことだが、事実として学歴は優れていないし、未だに自分の同年代は教育を受ける身分だというのに平日の昼間から授業をする。ヘンテコ。

用語を検索したり、記述問題の解答例を考えたり、事実の確認をしたり、どこを手厚く話すか、どこを飛ばすか、とかを考えた。相変わらず指示を私に出す先生はふんわりとした人なので、何分以内とかのルールを設けてくれない。あなたの好きな長さ、好きなことを話せばいいよ、とだけ言われた。そんなこと言われてもなあ。

授業と言っても生徒数は1桁で、かなりミニマムな教室。ただそれ故の緊張感もある。広い場所や大人数の前は慣れているのでなにも考えなくてよいが、ひとりひとりの顔がよく見える、どこを切り取っても自分にだけ注目がいく空間というのは珍しい。

いざ対面してみると、全員物静かな、声を発さない、控えめで真面目そうな子の集団だった。私がいたときはギャルとかアイドルとか髪色がすごい子とかハーフの身長高い子とか、かなりばらばらでどちらかというと派手な子が多かったので新鮮。本来こういう学校は目の前にいる人たちのような子が来るところなのだった。

授業(提出する課題を一緒に解きながら解説する、というのが正しい)をはじめてみると、本当に私しか喋らなくて、誰もうんともすんとも言わなくて驚いた。私は人に相づちを打ったり、聞いていますというポーズを無意識に全力で取ってしまうのだが、そのせいか学生のとき先生とよく目が合っていた。あまり気にしてはいなかったけれど、こうして反対側から見ると私のような人は珍しかったのかもしれない。教員はよくこんな一方通行に耐えながら毎日毎日仕事をしているなぁと思った。もちろん授業の形式にもよるし、今回がその最たる例だっただろうが、あながち間違ってはいないだろう。中学はほとんど行けなくて入学してきた子もいると聞いてしまっていたので、指名してどうにか会話するとかはよした。わざと挑戦しても良いのだろうけれど、それは私の仕事ではないと判断した。正しいかどうかは全部わからない。だってはじめてだし。

記述式の問題を解いている間は解説をやめ各自で集中してもらったのだが、これまた難しい。それぞれがどの作業をしているのかがよく見えないし、全員がスローペースななかでも個人差がある。これが終わった人は次のここを読んでください、とかこの問題に移ってください、とか言うけれど特にレスポンスはない。話を聞いていないようには見えなかったから、きっとそれぞれで進めてはいたのだろうけれど。全員の席まで確認しに行くかも悩んだが、なんとなく作業中を見られるのは嫌だろうな、それも私に、と感じてこれまたやめておいた。今思い返すと考えすぎだなぁとはわかる。考えすぎてよいことも悪いこともある。

結局全員が課題の最終問題まで終わったであろうタイミングで私の時間はおしまいとした。だめだったところもよかったところもなかった気がする。何か意味は見出せただろうか。少なくとも私は色々と考えるきっかけにはなった。今回のような課題をこなすことが私は楽しかった。特に記述や自らの意見をまとめて書く問題が好きだった。何文字以内でこれについて、みたいな文章を書くことはあまりないので、わくわくしながらやっていた記憶がある。けれどどうだろう。私の目の前にいた人たちが課題に取り組んでいる時間で楽しそうだと思うことはなかった。そうか、文章を書くことって楽しくないか。苦痛な人もいるか。可能な限り避けたい人もいるか。文章生成AIの発達ってそういうことか?どちらがマジョリティとかは重要ではなく、自分の当然がまたひとつ破壊された。教えることで教わることがあるとはありきたりな話だが、私に気づきを与えてくれた先生はやはり優れた人なのかもなぁと思う。

 

昼ごはんに連れて行ってもらうことになる。私は外食をほぼしないのに加えて、食べるものの幅が狭いので食べたことのないものが多い。いくつか近くで行ける店を聞いたところ、選択肢にラーメン屋さんがあった。私は人生でラーメン屋さんに行ったことが2回くらいしかない。もしかしたらもう少しあるのかもしれないけれど、記憶にないし多分ない、中華屋さんでミニラーメンとかは食べたことがあるような気はする。いわゆるカウンターで、ラーメンだけを出している、みたいな店に行ったことがないのだ。ここ5年は絶対にない。これに理由はない。嫌いだからでもダイエットでラーメンを控えているから、でもない。それらしい理由は何も思い浮かばない。単純に食べようという機会がなかっただけの話だ。それを伝えたところたいそう珍しがられてしまったため、ラーメンを食べに行くことにした。原宿の山頭火

チャーシュー麺のしおにした。しおがおすすめと書いてあったので。昼時だからというのはわかるが満席で驚いた。厨房が丸見えの特等席に座って、店員の作業をぼうっと眺める。ハイパーマルチタスクで、自分には絶対無理だろうなぁ、麺はゆで続けられ、チャーシュー麺と普通のラーメンとを出し間違えるだろうなぁ、しおか醤油かですら間違えるだろうなぁ、とかがぐるぐる巡っていた。それでいてすぐ提供してもらえたから、私の死角にもう何人かいるのだろうかと思う。

先生に観光客みたいですみませんと断りを入れてから記念に写真を撮った。いざ食べてみたらめちゃくちゃおいしくて面白かった。それから夢中で、静かに黙々と食べ、どうしてこれを食べてこなかったのだろうと真剣に考えることにした。

まず第一に、麺を啜れない。あの、ズルズルってやつ。できない。吸う能力がないのか、口をすぼめる能力がないのか。吸うのは得意な筈ですが...とにかく啜れない。

それから、熱々の食べ物を食べるのがへた。普通に序盤で舌をやけどした。痛い。ヒリヒリする。その原因は「早く食べないと」という焦りだったと思う。

ようやく思い出してきたのだが、幼い頃食事のスピードが遅かった私は、麺をだるっだるに伸ばしてしまっていた。ラーメンは増え続けて一生食べ終わらない食べ物だと思っていた。それでいて、ラーメン屋は長居できない場所だという印象があったから、自分には無理だという判断をしていたのだろう。かなり腑に落ちる。後付けで「ラーメンがそこまで好きじゃないからわざわざ行かない」という理由にしていたがおそらくこれが正解。導き出せて気持ちいい。そう思った頃には麺を啜るのが少しできるようになっていて、これって能力ではなくて経験値の問題か、と気付いた。うーん、違う気もする。そもそもの能力値は低いのだろうけれど経験さえ積めば習得できるように思えた。修行をしようか。先生がとろ肉チャーシューとかいう私のとは違う肉を何切れかくれて、それも全部食べた。あとスープも全部飲み干した。寒かったし。ごちそうになるし。男らしい食いっぷりですねと言われて、まあ笑とだけ返した。

食べ終わったところも撮ったらどうですかと提案され、そんなこと一切考えていなかったのでハッとして反射で撮影した。きれいな空のどんぶり。ひとりでいたらこういうことはしなかっただろうから、やっぱり人といるのは大事だと思った。そこから何度も先生に感謝を伝えたので、先生もたかがラーメンくらいでこんなに喜ばれるなんてと少し困惑していた。

 

学校に戻ってから数時間、動画生成AIをいじくって新しい利用方法を心得た。今後の私の仕事まで確認しておしまい。結局6時間以上そこにいた、午後は集中している時間が長かったのでそれほど経っていたとは感じなかった。面白い上に給料をもらえているので、今後も実りある仕事の時間にしていきたい。

 

渋谷まで歩いて行くと合間に神宮通公園がある。今日は寒いから路上生活の方がいたら大変だろうなぁと思って通りがかると案の定分厚い毛布にくるまっていた。私は何を信じていたのか素足にショートパンツで出かけていたので、毛布にくるまりたいなぁとだけ思った。

ダサい顔でダサい服を着ている人がいくつもいる。ファッションなのだから誰しもが好きな服を好きに着るべきだとは思うが、虚勢を張って全く似合ってもいない髪色格好で、かっこつけながら歩いている人を見ると恥ずかしくなってしまう。こっちが勝手にそう思っているだけだから、向こうは自覚するまで幸せに暮らしてほしい。

 

帰宅してイヤホンを外した瞬間、悪魔が耳から抜けていく感覚があった。その情景も客観ではあったが見えた。でも私の目には悪魔は映らないのでそれから先は普通に生活した。何も問題はなかった。ピルを飲み忘れてから半年くらい経っている。たった一文で自分の駄目さが集約されていて、名刺があったら名前の脇に記しておきたい。

 

先生から今後記事の執筆の仕事も引き受けた。書くのはいくらでもできるので大丈夫ですと答えたら、でもあなたブログはそんなに更新していないでしょうと言われた。連載している記事と自分のブログとは別で匿名で文章をあげたり、考えを記録したりすることは毎日やっているので大丈夫です。息抜きで文章を書いていますと答えた。息抜きで文章を書いているのか。